1) ジョン・ケージの功績について、演奏者が特定の音を発してそれの集合を音楽としてみなすのではなく、本来であれば周囲の雑音とみなされるような音をその瞬間に切り取って音楽とみなそうとする考え方を具体的に4’33’’などの作品で示し、不確定な音の組織も音楽としてみなす偶然性の音楽を創始した。また、グランドピアノの弦に異物を挟み込ませて音色を変化させたり、リズムや調性を無視した残響のみの音楽表現を行ったりといった前衛的というより実験的な音楽手法を使っており、楽譜にない音は沈黙なのだという固定概念を壊している。
このような彼の試みは偶然性の音楽だけでなく、雑音も音楽とみなすノイズミュージックの発展にも図らずも貢献しているのではないかと考える。彼は楽譜によって定められた音楽ではない実空間での表現そのものに重きを置いていたように感じるが、それは結果的に、現実空間において人間が雑音として切り捨てているものを活用する音楽の発展に繋がったのだと思う。
2) 偉大な功績を遺す人々に共通して言えることだと思うが、ジョン・ケージ氏の視野の広さを感じた。演奏することだけが音楽ではないと考える「4分33秒」、既存の楽器に手を加えるという誰も思いつかないようなアイデアの「プリペアド・ピアノ」、自然界の音すべてを「音楽」としてとらえるなど、ひとつの分野にとどまらないという柔軟性を持っている人だと思った。音楽家だけではなく、広い分野の芸術家に大きな影響を与えていることも、広い視野を持ち、音楽という枠組みにとらわれず、様々な事柄に興味を持ち、取り入れてきたからこそ、実現できたことであると考える。また、様々な人に影響を与えたことや、新しいことに挑戦してきたことが、他の芸術家たちの先を進んできたということであり、「パイオニア」と称される所以だと思った。さらに、私が思ったこととして、前衛的であったり、先を行っているといわれる人というのは、しばしば敬遠されたり、退けられることもある。しかし彼は、むしろたたえられ、「パイオニア」と呼ばれ、名が知れ渡っているので、すごいことだと感じたし、そういったことも含めて彼の魅力であると考えた。
3) ジョン・ケージと言えば「4分33秒」だが、全く知らない人から見たら無音であるこの曲がなぜ物凄く評価を受けているのかを知ることで彼の功績を実感することができる。まず、音楽に関しての全く新しい概念の創造だったからである。今まで音楽はより「複雑」にして美しくや力強くするなどが主流になっていたが、その真逆である「単純」の流れを作りまたその流れの頂点にきたのが「4分33秒」であったからである。ジョン・ケージは今まで価値のないものだとされていた「単純」な音楽も価値のあるものであると世界に伝えたと考える。また、演奏の最中の話で聴衆をも演奏者の一部として取り込むというのも新しい概念であったと考える。演奏をする上で演奏者が変われば雰囲気が変わって聞こえるように、聴衆が変われば演奏が変わり全く新しい音楽になるということである。そして何と言っても、「4分33秒」という曲は言ってしまえば無音であるからして、似せて音楽にすることができないというのも素晴らしい点であると考える。
4) ジョン・ケージは、アメリカ合衆国の音楽家、作曲家、詩人。独特の音楽論や表現によって音楽の定義をひろげたとされる。代表的な作品に「4分33秒」などがある。
ジョン・ケージは、1950年代の初めにデビューし、ヨーロッパの音楽を過去形の存在に変えた。
「偶然性」の音楽以後は、現代音楽の主要な様式のひとつとなって定着した。また、ジョン・ケージは、音楽とは元来、身振りや行為を伴うものであることを改めて人々に想起させ、第二次大戦後の作曲様式に多大の影響を与えた。
演奏以外の音のハプニングを予定した音づくりも行っており、「サウンドスケープ」論のような裾野の広い音の思想にまでつながっていった。
ジョン・ケージの創造活動と芸術観は、まさに文化革命であって、単に音楽の面での革命というよりは思想革命であり、精神革命でもあった。そのことからジョン・ケージの影響力は、音楽だけではなく、文化や思想の様々な領域にまで及ぶことになった。
また、第二次世界大戦後の西洋音楽の自己変革の先頭に立ち、今日においても、作曲界の最尖鋭部分の牽引力であり続けてきている。
5) 1940年に考案したグランドピアノの弦に異物を挟んだプリペアド・ピアノや居間にあるすべての物体をたたいて音楽を作る作品などアイデア優先の『拡張楽器』ができた。1945年にコロンビア大学で鈴木大拙から2年間禅を学び、すべて偶然をあるがままに受け入れる禅の思想から『自分で音は選ばずうかがいを立てる』手法を導き出した。そのことがきっかけで『偶然性の音楽』の在り方を提唱し始めていった。
また1951年にはハーバード大学で無響室を体験したことはケージの作風に大きな変化をもたらした。『沈黙を作りたくても自分が死ぬまで音は鳴り、死後も鳴りつづけるだろう』と考え、作曲過程で偶然性の関わる曲を作り始め演奏や聴取の過程に偶然性が関与する『不確定性の音楽』を提唱し始める。そしてそれまでの西洋音楽を覆すような偶然性の音楽である『4分33秒』を制作した。この曲は演唱会場で聞こえる普段意識しない音に心を向けるように仕向けられ、4分33秒無音のこの曲はどの音楽の部類にも属さない唯一無二の存在になっている。